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なぜ痩せたい?社会心理学者が解説する「装いの中のダイエット」

ダイエットと心理
公開日:2023.10.02

こんにちは、ダイエットカフェ管理人の福田です。

私は2008年にダイエット商品の口コミサイト「ダイエットカフェ」を立ち上げました。そして、日々ダイエット商品に投稿される口コミを見つつ、ずっと疑問に思っていたことがあります。

「なんで、みんなそんなに痩せたいの?」

いや、なんとなくは把握してるつもりです。

・可愛くなりたいから
・彼氏が欲しいから
・着たい服があるから

などなど。。 ただ、私から見ると

・可愛い人でもダイエットしてる
・彼氏いる人でもダイエットしてる
・もっと言うと、既に十分細い人でもダイエットしてる

わけです。なんだか、もっと根深い「痩せたいと思う原因」がある気がするのですが、、、それが何かがわかりません。

そこで、今回は社会心理学者である東京未来大学の鈴木先生にお話を伺ってきました!

取材にご協力頂いた専門家
東京未来大学
こども心理学部 こども心理学科
准教授
鈴木 公啓

博士(社会学)。広島大学教育学部卒業後、東洋大学大学院博士後期課程修了。東京未来大学こども心理学部こども心理学科助教、講師を経て、2018年より准教授。主な著書に装いの心理学-整え飾るこころと行動〈よそおい〉の心理学-サバイブ技法としての身体装飾痩せという身体の装い:印象管理の視点からがある。

専門分野 :パーソナリティ心理学、社会心理学
研究テーマ:身体、アピアランス(外見)、装い
現在の所属:東京未来大学 鈴木 公啓
現在の所属:アピアランス心理センター

目次

鈴木先生のご経歴

まず最初に鈴木先生のご経歴を紹介していただいてもよろしいでしょうか。

鈴木先生はい。大学と修士課程の頃までは臨床心理学が専門領域で、食行動異常を研究していました。ダイエットや過食、摂食障害などの研究をしていたのですが、博士課程に入るときに領域を社会心理学に変えて、一般の人のダイエットや身体に対する意識や行動を研究するようになりました。

なるほど。最初は食行動異常から始まったけれども・・。

鈴木先生もうちょっと幅広く、病理じゃなくて一般の人のダイエットの心理を扱いたいなと思いまして。その後、今度は「装い」という外見全体・・例えば、化粧とか美容整形、タトゥー、髪型のような様々な見た目を整えたり飾ったりという中に、ダイエットを位置づけて研究するようになりました。

「ダイエット単体」ではなく、「装いの中のダイエット」にテーマが移っていったのですね。

鈴木先生そうですね。やっぱりダイエットだけだと考えの幅が限られてくるんです。それを「装い」という枠組みの中に位置づけると、外見を整えたり飾ったりする他の様々な行動と一緒に読みといていくことができるようになってきます。

確かに。

なぜ、人は痩せようとするのか

今回の取材テーマ「なぜ人は痩せようとするのか」について、鈴木先生の考えを教えてください。

鈴木先生そうですね。まず「装い」という枠組みから見ると、ダイエットだけが特殊な行為ではなくて。人が自分の見た目を変えるために、例えば化粧するとか、美容整形をするとか、そういった外見を変える行為の中の一つとして、体のラインを変化させるためにダイエットを行うと私は位置づけています。

外見を変える行為の一つとしての、ダイエットなんですね。

鈴木先生自分の中の理想像というのがあって、それに近づけるためにダイエットをする。もちろん理想を考えるときに、ある程度は社会の流行の影響もあるわけです。例えば何百年とか長期的な目線で見ると、今は痩せている人が魅力的に見えるという社会的な流行があるから、自分も痩せを求めると。

なるほど。今は「痩せてるのが流行してる」時代という。。

鈴木先生自分の理想像を、現在生活している社会における基準といいますか、美の基準に合わせて見た目を変えようとしてるという捉え方を私はしています。

単純に見た目を変えたいという話だけでなく、社会的な基準とかも意識しながらなんですね。

現代日本では、ダイエットの希少価値は高い

鈴木先生装う方法には様々な選択肢がありますが、化粧や服装であれば、それらを購入するお金があればある程度は自由に楽しめます。でもダイエットだと理想の体型になるのに努力が必要で、また、数ヶ月ぐらいは最低でもかかりますし、気を抜いたら元に戻ってしまうんですよね。だからいろいろなダイエット商品が・・・

永久に出続けています。。

鈴木先生そういう意味で、痩身体型の希少性というのは生じてきます。みんながそんな簡単に達成できないからこそ、痩せていることには非常に価値があることになります。商品を購入して上手に化粧するというのとは違うタイプの価値がそこには生じているわけです。

希少性があることで、価値が高まるわけですね。

鈴木先生そうですね。例えば昔の食糧不足の時代であれば、肥満であることは、むしろ希少性が高いので価値があって、そこに美の基準があった時代もあります。今でもアフリカの一部の国では太ってる方が美しいといった文化があります。

なるほど。希少性が変わると、美の基準まで変わってしまう・・。

体型は装いのベースになる

鈴木先生もう一点、体型の特徴として、他の装いのベースになるということがあります。例えば、おしゃれな服を着たいのに今の体型だと入らない場合、服の前にベースである体型を変えてから、そこにそのおしゃれな服を持っていく。このように、オシャレするためにもまずダイエットに取り組むっていうのはよく見られることです。

他の装いのベースになるっていうところでも、体型は価値が大きそうですね。

鈴木先生あと、タトゥーとかもそうですけど。ガッツリ引き締まった体にタトゥーが入ってるのと、太ってる体にタトゥーが入ってるのではちょっと印象が違うのではと思います。

周りから受ける印象が結構変わりそう。

鈴木先生そうですね。装いや外見を考えた時、やはりベースとなるものが理想にあっていないと、他の装いが映えない、と考えるわけです。それもあって、やっぱりまず体型にいくというのはあるかなと思います。

今の話でいうと、ダイエットは他の装いへの相乗効果があることで、コスパ・タイパが良いと言えるのでしょうか?

鈴木先生他の装いをもっと楽しめるって意味では、ダイエットは相乗効果があるのだと思います。

なるほど。

美の基準はコロコロ変わる

鈴木先生ただ、ダイエットによる痩身体型を美とするのは、先ほども言いましたがあくまでも今の社会におけるものであり、絶対的に良いものとか悪いものといったものではないと考えられます。美の基準は変化しやすいので、あまり何が良いとか悪いとか考えるのも避けたいところです。例えば、女性のファッションは短期間で流行がコロコロ変わりますよね。それこそ5年前の化粧を今してたら、今の人たちは「古い」って思ってしまう。そのくらい美の基準ってコロコロ変わります。

変化早いです。

鈴木先生あと、昔の日本だと江戸時代にお歯黒とかがありますが、あれも当時は普通の文化、、、当時でも、本人達はちょっと嫌だったみたいですけども、普通に見られた文化ですが、今から見たらすごい違和感があると思います。装いは、その時代や文化によって何をよしとするのかその基準がすごく移ろっていってしまうものなんです。

時代・文化によって、良し悪しが変わり過ぎです。。

鈴木先生そうなると、いちいち「この装いが良い・悪い」って考えること自体が実はナンセンスなものになってしまう。だから、研究者としては、一概に良い悪いという見方はしないで、どのような文化の中で、なぜそれが選択されて、選択した人は一体何を期待して、実際にどのような効果があったのか、みたいな捉え方をするという感じですね。

装いは総合力

なるほど。良し悪しだけで考えようとすると、視野が狭くなりそうですね。

鈴木先生視野が狭いと言えば、ダイエットの研究だけをしてると、ダイエットの周辺しか見えずに考えが狭くなりがちなんです。もっと広く、「装いの中のダイエット」という視点で見ると、ダイエットも外見を整える行為の一つで、しかも他の装いと連動してるという見方ができる。

なるほど、装いっていうのはなんだか総合的なものですね。

鈴木先生はい、広くて深い複雑なものですね。

それなのに、ダイエットだけを気にしてると、とにかく体重が減ればいいみたいな感じになりがちです。

鈴木先生判断基準が1次元的になってしまうんですよね。それこそ痩せ方も単に不健康でガリガリに痩せるのもあれば、ちゃんと体に筋肉をつけて引き締める健康美という痩せ方もあるでしょうし。

ダイエットカフェの口コミを見ていても、「とにかく痩せたい」という気持ちが強い方は多い印象あります。そういう人に「服装とか化粧とかも含めた総合的な装いを考慮した方が、バランスよくなる」って伝えるのはすごい意味があるなって思いました。

鈴木先生そうですね。ただ、なかなか伝わらない。とにかく痩せて体重を減らすというところに軸を置いてしまいがちなんですよね。

確かに。。

鈴木先生その軸から離れるっていうのは今の社会で育ってきた人たちにとってはかなり難しいことではあります。でも、本当は離れなければいけない時代になってきてると思います。

体型の数字化の弊害

特に体重って「1ヶ月で10キロ減」みたいに数字で示せるので、インパクトありますよね。

鈴木先生わかりやすいですよね。昔、アメリカでダイエットが流行り始めたキッカケに、体重計ができたというのもあるらしいです。数字で確認できるということで。

数字だと比較もできるし、目標も設定しやすいし。

鈴木先生もちろん目標を設定するには数字になった方がわかりやすいんでしょうけれども。逆に、数字になることで、囚われてしまうところもあります。摂食障害なんか、まさにそれですよね。500g減った、今度はさらに100g減らすという風になる。そして、100gでも体重が増えたらそれに恐怖を覚えたり。

本当は同じ160センチ50キロでも、体脂肪の有る無しで体型って全然違ってしまうと思うんですけどね。

鈴木先生そもそも、みんな骨格が違うので、同じ身長・体重でも体つきが全然違います。現代は数値に囚われてしまってる社会と言えるのかもしれないですね。

数値はわかりやすいので、情報発信するメディア側も使いがちです。

鈴木先生それこそダイエットの広告だって「ちょっと痩せました」よりも「マイナス5キロ」の方が伝わりやすいというか。

本来、装いは総合力なのに、なかなかうまくいかないですね。

鈴木先生ですね。例えば化粧も自分の顔にあった化粧であれば素敵になるし、服装も自分の体型に合う合わないがある。そして、体型も本当は数値だけでは測れない自分に合う体型があるはず。それなのに、体重とかウエストサイズとかの数値ですごく狭い基準で見てしまっている気はします。

日本人女性のBMIの低さ

数値と言えば、以前日本人の男女別のBMI(肥満度を数値で表す指標)を調べていたんですけれども、男性の方はずっと右肩上がりなのに、女性はずっと下がり続けてて今21、22ぐらいなんです(※グラフ参照)。

鈴木先生女性のBMIはここ10年は横ばいで下げ止まってるんですよ、実は。とはいえ、今は若い女性だと平均値が21くらいで、分布を考えると20以下、、18とかの人とかもいるわけです。そうなると、ほとんど摂食障害の判断基準の一つを満たすくらいになってしまい。健康という点では心配ですね。

日本の女性はちょっと痩せ過ぎですね。ちなみに外国では、また事情は異なるのでしょうか?

痩せに偏ってしまう原因

鈴木先生日本人が基本的に日常生活で目にするのは大体日本人で、外国人を見ることがあるとしても、メディアが多いわけです。例えば、ソーシャルメディアとかで見る外国人は、韓国のK-POPの人達やアメリカのセレブみたいなちょっと特殊な人達が多いと思います。

確かに。。

鈴木先生そして、実際アメリカに行くと、現地では日本人の感覚としては結構太っている人たちが多くて、日本人みたいに痩せてる人はあまり見ないんです。ああいうところにいると、日本人も、痩せなきゃという気持ちになりにくいと思います。でも日本にいると特殊な外国人しか目にする機会がないので、アメリカ人や韓国人はスタイルが良いとか、思ってしまいやすい。実際、韓国人は平均的には日本人よりも太ってるんですよ。

日本人が実際に目にするのはインターネットやマスメディアが発信するスリムな人ばかりで、どんどん感覚が偏ってしまいそうですね。。

鈴木先生そうですね。どんどん痩せる方に、痩せる方にいってしまう。そのように判断基準が狭いところでなされてしまうと、変に突き詰めてしまう。本当はもっと多様性があるのに、それを知る機会がないのが、ダイエットし過ぎてしまう原因の1つなのかもしれません。

やはりメディアの力、最近だとSNSのインフルエンサーの影響力が大きそうです。

装いのバランスを取るのは難しい

鈴木先生本来であれば、「装い」をすると前向きになれるんです。例えば、自信が持てたり、積極的な行動を取れるようになったり。あと、そうなると他の人からも「素敵だね」「最近痩せたよね」みたいな良いフィードバックをもらえて気分も良いですし、本人のQOL(生活の質)が高まることに繋がっていったりもする。

良いことですよね。

鈴木先生ただ、美容整形だってハマりすぎると良くないのと一緒で、ダイエットもやり過ぎると体を壊してしまう。この「行き過ぎないようにするためにはどうすればいいか」について、心理学者は国内外で様々な研究をしてるのですが、なかなか難しい。極端な話、広告の制限とか含めて社会を変えていかないと、個人個人に対して介入するのは限界があるのではというのが正直なところです。

行き過ぎないようにバランス取るの、めちゃ難しそうです。

外見に対する意識は人の根源的なもの

最後に、鈴木先生が「装い」と「痩身」について研究してきて、ここが特に興味深いと思ったポイントなどありますでしょうか?

鈴木先生どのくらいみんなが自覚しているかは別として、やはり装いとか外見に対する意識は人間の根源的なものだなというところですかね。例えば年配の男性が「外見なんて気にしない」って言ってたとしても、彼らだって、パジャマで会社には行かない。

確かに。。

鈴木先生大事な商談があったら、ネクタイを鏡で確認したりするじゃないですか。本当は外見を大事だと思ってるのに、それを認識してない。それでも、外見って自分や他人に対する影響がすごく強い。そもそも装わない人はいないですし、そういう根源的なところで人の営みに関わっているという点はやっぱり面白いですね。

編集後記

東京未来大学の鈴木先生に、「なぜ、人は痩せようとするのか」についてお話ししていただきました。

このテーマ、当初に予想していたよりも遥かに幅広く、複雑でした。。
「可愛くなりたいからダイエットする」という表面的な話で終わるわけもなく、「痩せ体型の価値」「現代日本の美の基準」「装いのバランスの難しさ」といった多角的な視点からお話ししていただきました。

鈴木先生、今回は取材を受けていただき、ありがとうございました!

 
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